《大人編》おばあちゃんとの約束。
ふ~、ふ~。
杏子ちゃん、ほかにして欲しいことない?
おばあちゃんこそ、休んでよ~。
ふふ。大丈夫。
もうずっと背中さすってくれてて、全然休んでないじゃない。。
杏子ちゃんもね。
それはそうなんだけど・・・。
ねえねえ、おばあちゃん、おばあちゃんがおとうさん産んだ時はどうだったの?
そうね~。
お母さん、杏子ちゃんのひいばあちゃんね、が一晩中背中さすってくれてたの。
それで、おとうさんが産まれたのよ。
大変だったけど、嬉しかったなあ。
おじいちゃんから、少し聞いたことある。
なんでも、すごい難産で、おじいちゃん、お医者さんから、危ないのでしばらく寝かせないようにって言われて、めちゃくちゃ怖かったって。
そうね~。
今から思えば、あの時、異様に優しかったのはそういうことなのね。
ふふふ。
おじいちゃんはいつからいたの?
ちゃんと病院には一緒に来てくれて、ずっと傍にはいてくれたのよ。
おじいちゃんもそゆボイントでは優しいからね~。
そして、最初はひいばあちゃんと交代で背中さすってくれたんだけど。
うん。
しばらくしてすぐに寢ちゃったなあ。
ふふふふ。それもおじいちゃんらしいなあ。
それで、当時は割と当たり前になりつつあった、出産の立ち会い、おじいちゃんは絶対にしないって言ってたの。
そうなんだ。
おじいちゃん、怖がりだからね。
でも、おばあちゃんがほんとに辛そうに見えたんだろうなあ。
いよいよ、分娩室に行くってなった時、一緒に行こうかって声をかけてくれたの。
そうなんだ~。
それで、一緒にいったの?
ううん。
おばあちゃんが断ったの。
え~、なんで~?
やっぱり恥ずかしかったからかなあ。
おとうさんが産まれた時、おじいちゃんすごく喜んだんだろうなあ。
そりゃもうすごかったわよ。
もちろん、杏子ちゃんが産まれた時もすごかったし。
杏子ちゃんの時は、名前問題でうるさかったけどね。
ふふふ。
ほんとにぱみゅ子って付けたかったんでしょ。なんだか目に浮かぶな。
おとうさんと、拓哉さん、阻止するべく、作戦立ててたなあ。
ふふふふ。
あ、杏子ちゃん、拓哉さんたち、来てくれたみたい。お仕事やっと終わったのね。
じゃ、交代するわね。
おばあちゃん。
はい?
傍にいてね。
もちろん、ずっと傍にいるわよ。
背中さすってくれてありがとう。
いいえ、杏子ちゃん。
杏子ちゃんが産まれる時もずっとおかあさんの背中さすってたし、それに、杏子ちゃんが出産の時、背中さすってあげるのが、おばあちゃんの夢だったのよ。
叶えさせてくれてありがとう。
ふふふ。
ねえおばあちゃん。
なあに?
この子、女の子だって分かってるんだけど、この子の出産の時も、さすってあげてね。
わたしと一緒に、交代で背中さすろっ。
あらあら。
おばあちゃん、約束だよっ。